本のように開いて使う花瓶
【Flowery Tale(フラワリーテイル)】
公益財団法人・静岡産業振興協会が主催する「つなぐデザインしずおか The 9th edition 2019-2020 」事業にデザイナーとして選定され、参加。年間500万冊を超えるメモ帳や付箋ほか紙製品を製造販売する大日三協株式会社の要望は、以前より製造を続けているメモ類ではなく新規分野となるインテリア関連製品をということで、新たなブランド構築も視野に入れていることから、
・できるだけ外注比率を抑え、工場の設備と技術を活用すること
・事業における完成品のお披露目が2月初旬の展示会であること
・B to C製品の製造をこれから進めていく段階であること
を踏まえ、できるだけ早いタイミングで成功体験を得られるように春の歓送迎の機会から母の日にかけて約3カ月のギフトシーズンを意識し、紙でできた花器を提案した。
天糊加工によって綴じられた本のページ部分が花瓶の形に型抜きされており、これを開くことで半立体の花瓶のシルエットが浮かび上がる。上から見ると、本を開くと同時にカバーと本体の間に隙間ができるので、そこに一輪挿しとして機能する試験管を差し込む。前から見ると試験管に収まった花は本の花瓶に生けられたように見える。
花瓶の形は1冊の本に3型収蔵されており、本は上下逆でも使用できる。どのシルエットも上側は細め、下側は広めの設計となっており、一輪なら細めの方、ブーケなら広めの方を上にして花を挿すなど、ボリューム感に合わせたアレンジが楽しめる。
一般的な花瓶は花を保持する機能は花瓶の形状に合致するが、この本の場合は花瓶の物理的造形が、花瓶としての花の保持および貯水機能から一旦解放され、自由自在な形状を担保された上で再びその機能(試験管)とともに再構成されたデザインとなるため、実際の花瓶ではありえないバランスや、上下の向きによっては花束やワイングラスに見える形状をも許容している。
花瓶ページに採用されているのは『OKレインガード』という耐水紙。天然パルプ100%のこの紙は、撥水性、耐水性に優れ、水や湿気に強い特性を持つ。
一冊に収蔵される3種類それぞれの花瓶ページは、書籍紙の薄いクリーム色をベースに、同様の濃度でラベンダー、ピンク、ブルー、グレーなど、その色一色だけを見ると白の部類に入るような極めて淡い色であり、全体的な統一感を持たせつつ、うっすらとカラーバリエーションを感じられる仕様に。印刷色の濃度を計る濃度計の数値はどの色も「0」であるが、目で見る前に脳にダイレクトに伝わるような色合いとなった。
カバーの背表紙の上下端は高さを1mm増やしており、小口方向に緩やかなRを描きながら合流する設計になっている。通常このようなカバーは長方形なので直線的な断裁でできるが、これは部分的に曲線を有するので抜型が必要となる。しかしこれにより本体が小口方向に前傾し、開いた表紙の底辺の角2点と背表紙の3点で安定して立つこととなり、開いた状態を保持する役割を果たす。
花のある暮らしを物語るおとぎ話のようにと、『Flowery Tale』と名付けられた本のような花瓶。パッケージの帯のコメントは、工業デザイナーの日原佐知夫さんとフラワースタイリストの田野崎幸さんにご協力いただいた。
ネットで注文し数時間後から翌日には商品が届く時代に、目次で選んだ次の瞬間に立体物として使えるアナログ製品となった。
製作後記 CLIENT’S POSTSCRIPT
大日三協株式会社 製造本部長
小出卓史氏
1988年から静岡市が実施し、その後公益社団法人静岡産業振興協会が引き継いで進めている新商品開発プロジェクト、ニューウェーブ「しずおか」創造事業。2006年から「つなぐデザインしずおか」として、静岡市などのメーカーとデザイナーがコラボレーションすることで静岡ならではの自社ブランド商品の創造と発信をする事業に参加しました。
弊社は紙の販売と、紙製品の製造会社としてC向け製品の開発に取り組みたいと考えており、そこには「プラスチックから紙へ」「文具からインテリア雑貨へ」という想いを持っており、その想いに共感していただいたこと、また将来的にはブランド構築や海外進出も視野に入れていたことから、数十名の候補者からmemori宮内さんをデザイナーとして選ばせていただきました。
製造責任者である私との、数えきれないほどの電話やメールなどの連絡、静岡本社での打合せ、試作品に対する意見交換などmemori宮内さんとの仕事がとても新鮮に感じられ、頭もカラダも大変ではありましたが一歩ずつ製品完成に近づくプロセスで製作に対する勇気と楽しさが増しました。そして仕様を急に変えなければならなくなった時の宮内さんの素早い判断や1つひとつの丁寧な進行の集積により、自社製品第1弾となる「Flowery Tale」が完成しました。自社の技術面で1番のウリである「天糊加工」を製品に取り入れていただいたことも感謝しています。私のパートナーが宮内さんで間違いありませんでした。
Flowery Taleは天糊加工を採用しながらも既存製品とは違う側面もあり、既存製品とは違う検品方法や最終チェック方法など自社オリジナル製品としての取扱い方法を知る意味でも、加工課の社員・パート含め私たちに役立つ製品となりました。また私としては、今まで使用したことが無い材料の選定、各工程での精度など妥協のない製品づくりを勉強でき、今回の「見て、触って、驚いた」経験は自分だけでなく他の社員にも共有したい、経験させたいと思いました。
自社製品ができ、自社ブランドができ、これからやる事はたくさんあるのではと思う反面、そのやるべき事がまだ自分達には分かっていないという不安もあります。宮内さんにはご迷惑をお掛けするかもしれませんが、これからも、初歩的なところからご相談にのっていただけけるようお願いいたします。
製作後記 CLIENT’S POSTSCRIPT
大日三協株式会社 製造本部長
小出卓史氏
1988年から静岡市が実施し、その後公益社団法人静岡産業振興協会が引き継いで進めている新商品開発プロジェクト、ニューウェーブ「しずおか」創造事業。2006年から「つなぐデザインしずおか」として、静岡市などのメーカーとデザイナーがコラボレーションすることで静岡ならではの自社ブランド商品の創造と発信をする事業に参加しました。
弊社は紙の販売と、紙製品の製造会社としてC向け製品の開発に取り組みたいと考えており、そこには「プラスチックから紙へ」「文具からインテリア雑貨へ」という想いを持っており、その想いに共感していただいたこと、また将来的にはブランド構築や海外進出も視野に入れていたことから、数十名の候補者からmemori宮内さんをデザイナーとして選ばせていただきました。
製造責任者である私との、数えきれないほどの電話やメールなどの連絡、静岡本社での打合せ、試作品に対する意見交換などmemori宮内さんとの仕事がとても新鮮に感じられ、頭もカラダも大変ではありましたが一歩ずつ製品完成に近づくプロセスで製作に対する勇気と楽しさが増しました。そして仕様を急に変えなければならなくなった時の宮内さんの素早い判断や1つひとつの丁寧な進行の集積により、自社製品第1弾となる「Flowery Tale」が完成しました。自社の技術面で1番のウリである「天糊加工」を製品に取り入れていただいたことも感謝しています。私のパートナーが宮内さんで間違いありませんでした。
Flowery Taleは天糊加工を採用しながらも既存製品とは違う側面もあり、既存製品とは違う検品方法や最終チェック方法など自社オリジナル製品としての取扱い方法を知る意味でも、加工課の社員・パート含め私たちに役立つ製品となりました。また私としては、今まで使用したことが無い材料の選定、各工程での精度など妥協のない製品づくりを勉強でき、今回の「見て、触って、驚いた」経験は自分だけでなく他の社員にも共有したい、経験させたいと思いました。
自社製品ができ、自社ブランドができ、これからやる事はたくさんあるのではと思う反面、そのやるべき事がまだ自分達には分かっていないという不安もあります。宮内さんにはご迷惑をお掛けするかもしれませんが、これからも、初歩的なところからご相談にのっていただけけるようお願いいたします。