
MITSUI & CO., LTD. 「WALL CALENDAR / DESKTOP CALENDAR」
Project : Corporate Calendar
Company / Brand : 三井物産株式会社
Product Design / Graphic Design / Package Design
Website > MITSUI & CO., LTD.
1947年(昭和22年)設立。全世界に広がる営業拠点とネットワーク、情報力を活かし、金属資源やエネルギーをはじめ様々な分野で事業展開する、日本を代表する大手総合商社、三井物産株式会社のコーポレート・カレンダー。
年末の挨拶として毎年配布される企業カレンダーは、取引先との接点を生む営業ツールの定番であり、またブランディングの観点からは年間を通じて社名を身近に感じてもらうことや企業メッセージを発信するメディアとして長年活用されてきたが、近年は経費削減や感染症対策としての訪問機会の見直しなど、企業による配布数は減少傾向にある。しかし、単身世帯の増加やPC・スマホでスケジュールを管理する層の拡大などマイナス要因はありつつも、シーズンが来ると店頭を賑わせ、リアルなツールとして国内外を問わず根強い人気が見受けられるのも事実といえる。
そこで、カレンダーの内容はもとより製造~配布、使用、廃棄まで細やかに配慮して三井物産ブランドの訴求力向上を図ると共に、既存ユーザーに配慮しながらも市販のカレンダーを購入するユーザーの新規獲得を目指し、国内外の多様な使用スタイルや趣味嗜好に合わせやすいデザインを検討した。
【壁掛けカレンダー】
「三井物産の森」をテーマに社有林のストック画像を用いるという条件があった壁掛けカレンダーについて、オフィスや住居など「空間」で、「共用」で使用されることからインテリア目線で検討。
ESG課題の解決や持続可能社会の実現への貢献など、三井物産の森林経営は企業メッセージとして重要な1つの側面ではあるが、カレンダーを掲示するシーンでは個々の多様な文化的背景やインテリアの趣味嗜好の方がより優先されるのではと想定し、好みに合わせて画像の有無を選んで掲示できる仕様とした。「三井物産の森」に関する風景画像や意義、規模感などを示す情報は盛り込みつつも、掲示方法によって「森のイメージを含めてカレンダーが見える状態」と「シンプルなカレンダー部分のみが見える状態」の2通りのインテリアへの合わせ方が可能となる。
サイズは、掲示スペースを問わず小回りが利くように、従来の三井物産カレンダー(以下:従来品)のB3サイズからより小さいA3サイズに変更。梱包時はその半分のA4サイズとなり、重量も素材の見直しにより約30%軽量化し、配布時の運びやすさや輸送コスト低減にもつながった。
また従来品のページ数は計7枚(表紙1枚+本文6枚/両面印刷/社有林の画像6種)で、1ページにつき2ヵ月分のカレンダー表示であったが、スケジュールの書き込みができるように1ページにつき1ヵ月分のカレンダー表示とし、視認性も高めた。
そして面積は約1/3に縮小し、ページ数も従来品と同様であるものの、社有林画像は2倍となる計12種を掲載。企業メッセージの表現力UPと同時に、毎月変わる画像によりユーザーを飽きさせないデザインとなった。
【卓上カレンダー】
実用性が重視される卓上カレンダーは、「手元」で「個人的」に使用されることからパーソナルな文具目線で検討した。
デスク上に所狭しとビジネスツールが並ぶ中、カレンダーを使用してもらう為には「置くスペースの確保」が重要であり、スケジュールを管理すること以外にも実用的な用途があれば「置く理由」を補強できると想定。そこで、モノの整理や筆記具を常備できる卓上トレーを付加したカレンダーを考えた。ひと月毎に1枚のカード状になっている計12枚のカレンダーカードをパッケージ(ボックス)から取り出し、ボックス内部にある隙間に立たせるとボックスがトレーとなり、トレー付きカレンダーが完成する。
カレンダーは筆記スペースを確保しながらもスリムな形状なので(W200*H80mm)、目につきやすいデスクトップのモニター下に設置でき、またキーボード手前の限られたスペースでも無理なくカレンダーカード1枚を置いてスケジュールを記入することができる。
一方、実用性の高さ故に従来の卓上カレンダーを使い慣れたユーザーも多いと考え、従来品の各月ページの裏面にある年間カレンダーは残すことに。ただ12月の裏面だけは次の1月のカレンダーを表示して、年末に新たに配布されるまでそれを暫定的に使用してもらうことを考えた。カレンダーを一般的な12ヵ月分ではなく「13ヵ月分」と再定義することで、多忙な配布側にも、1月の予定を早く記入したいユーザー側にもバッファとなり、卓上カレンダーの定位置確保と継続利用を促す仕様とした。他にも、筆記スペースや紙(書き心地)、全体の色味、サイズ感など既存ユーザーにも違和感なく受け入れられるよう留意している。
カレンダーに記入するための筆記具のほか、文具類、名刺、付箋、おやつ等、自由に使用できるトレーには、社名の目視頻度を自然に高めるため「MITSUI & CO.」のテキストを印字。カレンダーを見る時だけでなくトレーに手を伸ばす際にも社名が目に入る。ボックス形状のパッケージでギフト性も高まったデザインとなった。
三井物産が進めるブランディングプロジェクトの文脈を踏まえ、社名表記の細部のバランスから全体の印象までミクロとマクロの視点を行き来しながら、ブランド訴求の最適解を目指した。そして、カレンダーが使われる為の工夫をはじめ、FSC認証を含む紙素材やペーパーリングの採用、製造合理性や配送効率に基づく素材とサイズ感の選定、使用後の廃棄など、各プロセスにおいて暮らしと環境へ広く配慮し、三井物産が発信する意義を高められるよう努めた。
結果として社内での配布希望数の集計は昨年度を超え、関連企業数社からも制作のご依頼をいただいた。新年の幕開けに相応しく、また年間を通じてユーザーに寄り添えるカレンダーとなることを願う。